FSSってご存知ですか。今となってはすっかり有名な気もしますが、一応説明しておきますと、永野護原作の漫画作品「ファイブスター物語(The Five Star Stories)」の事です。
このFSS、知らない人に説明するのが物凄く大変な作品で、コレまでリアル生活においても、何度か知人に薦めたのですがあまり打率がよくありませんでした。
しかし、主人公が美形の超人的頭脳と身体能力を持つ青年(実は神)でして、BL的扱いが向いてそうなカッコいい男性キャラクタもバカスカ登場するのです。
が。
検索してみたところ、どうにも腐女子の皆様方にはイマイチ反応されていないようなんですよね。まあ、元々がSFぽい雰囲気を持っているから敬遠されているのかもしれませんが、古くは「地球へ…」や「超人ロック」など、優れた女性向けSF漫画作品も存在している事ですし、みなさん美味しくいただけるのでは、と思っているんですよね。
という流れで、無謀にもFSSを知らない方へのFSSのお勧め記事を書いてみようと思います。
FSSってどんな作品?
アニメ雑誌を読まれる方でしたらなじみの深い「月刊ニュータイプ/角川書店」誌に不定期連載している漫画作品です。
第1話掲載が1986年04月号との事ですから、なんと約30年前から続いている作品。「ガラスの仮面」の連載開始が1976年なので丁度10年後追いって感じですね。
ガラスの仮面が49巻(かな?)発表されているのに対して、FSSはたったの12巻です。30年で12巻。てことは平均2年6ヶ月毎に1冊てことですね。実際は間隔が偏っていまして、12巻が発売されたのが2006年ですから、9年前。
最新刊が9年前……ゴクリ。
生まれた子供が小学校3年生になっても、まだ続きが出てないわけですね。あは!そんな作品が人々から忘れ去られて消えていくことなく、いまだに人気がある(ハズ!)最大の理由は、膨大かつ緻密な設定に裏打ちされた世界観にあります!
年表からスタート
僕はこのFSSの連載第一回目の衝撃を忘れません。
まず見開き折り込みで、数千年分の年表が最初に示されるのです。そんなの、ありますか。物語の大筋や事件を最初に見せられる漫画なんて。更に、わざわざカラーページでキャラクタ紹介まで載っている……。
そして第1話の冒頭は、物語の最後の方(らしき場面)のエピソードです。
なるほど、壮大な叙事詩的作品を展開してくのだな、と思った僕はこの作品を追いかける事にしました。しかし、それは途方もない長旅となるのを、この頃の僕は判っていませんでした。それは単に連載期間が永くなったと云うことのみを意味するのではありません。
物語を理解するには漫画だけを読んでいたのでは全然足りないのです。
どう云う事か意味判りませんよねw。漫画作品の物語を理解するのに、漫画を読んでいるだけではダメ、とは。事の発端は連載開始から2年遡った1984年のTVアニメです。
「重戦機エルガイム」のデザイン
FSS紹介の途中でTVアニメ「重戦機エルガイム」の話です。なんでやねん。いやコレが発端ですから。
エルガイムは当時勢いノリノリだった日本サンライズ製作のTVシリーズ・ロボット・アニメです。原作・総監督はあの富野由悠季さんです。
で、このアニメのメカニック・デザインを手がけたのが後にファイブスター物語を描く永野護先生なんですね。当時としては画期的なアイデアであった、機構部と装甲部を分けて考えられたヘヴィメタル(ロボット)のデザインや、立体化に耐える緻密な関節の機構などを、これでもか!これでもか!と投入しまくった大意欲作でした。
そしてこのエルガイムのデザインを作り上げる過程において、永野先生の変態っぷりが暴走します。つまり、本編で語れることのないメカニックの詳細設定やその歴史、世界観などを、勝手にどんどん膨らませていたらしいんですね。
今で言えば設定厨とか云われちゃうアレです。
そして放送終了後に発売されたエルガイムのムックにて、その設定が公開されるや、一部の煮染まった大きなお友達勢が猛烈にザワつきます。そして、ここからFSSが動き始めるのです。
つまり、エルガイムから広げた世界観を元に、じゃあその世界観をベースにした物語を本当に作って漫画連載しちゃおうぜ、って事です。
漫画家でもないメカデザイナーに商業雑誌で連載させちゃう方もさせちゃう方ですが、引き受けちゃう方も引き受けちゃう方です。
ちなみに、エルガイムもむっさ面白いアニメなのでオススメですぞ!
商業誌で漫画の練習……
結果的に、漫画連載経験のない永野先生の練習(?)というか助走(?)として、FSSをいきなり連載する前に、1年間12話分の別タイトル連載が始まります。それが、月刊ニュータイプ創刊に合わせて発表された「フール・フォー・ザ・シティ」(全1巻)です。
表紙を見ると、いかにも暗そうなSFかなーなんて思ってしまいますがそうではなく、未来の音楽もの、というかバンド漫画です。というのも永野先生、ロック・ベーシストというキャラ性も持ち合わせているんですね。
趣味満開でロックバンドの漫画を描く永野先生。なんなんでしょう、このパーフェクト感。イラッとしますね。うそ、大好き!
西暦2185年。音楽バンド・スーパーノヴァのラスたちは、偶然にも最後のロック・サクセサーであるアラニア・シャンカールと出逢った。本物のロックに触れることができると喜ぶラスたちだが、彼女は心を閉ざし、ロックのことを心に封印していた。しかし後に、アラニアは音楽が人の心を動かす素晴しさを知り、ラスたちは本物のロックに触れる。そして、2世紀もの日々を隔て、再び人々の耳にロックの鼓動が響き渡る。
権力に弾圧されたロック・ミュージックを取り戻すという、胸アツ展開の短編です。僕もロックバンドで演奏していたものですから、この作品も大好きです。
ただしアレです。流石に漫画作品一発目なので、作画がアレな感じ……。メカはすんげーカッコいいんですよ、メカは。
とにかく、漫画家としてはズブの素人同然なわけですから、後のFSSの為を思えばこの作品を商業誌上で練習させた編集長の采配は、見事としか云えません。天晴。
紙の本が全然売れなくなった今では到底考えられない荒技ですから、時代が永野先生を選んだと云えるんじゃないでしょうか。
ちなみに、タイトルはフォガットというブギーバンドのアルバム名かつタイトル曲名でして、永野先生の音楽を愛するマニアっぷり、造詣の深さも窺い知れます。アルバムのその他収録曲もむっさむさカッコいいのでこれもオススメですぞ!
かくして連載は始まった
フール・フォー・ザ・シティで、商業誌の連載ペースやクオリティ・コントロールを練習し把握した永野先生は、渾身の一撃を持って、連載第1回目を発表しました。これが、先に書きました年表付きのヤツです。
ここから始まる物語はとにかく壮大で惹き込まれるものでした。練習成果もあって漫画もいい感じで進んでいきます。なんだかんだと、途中で休載はあったものの、2004年までは連載が続きます。2004年に何があったのかは後述するとして、次回は物語のあらすじやキャラクタについて紹介してみようと思いますよ。
ところで
このFSS、とにかく濃いファンの方が日本中、いや世界中?にいらっしゃいまして、深い考察や面白い解釈を展開されているサイトがいくつかあります。以下、紹介させていただきますね。いやーみなさん凄いです。
最後に
因みにこの「ファイブスター物語を語ってみる」、全部で3回くらいになる予定です。最初に云えよ!って思った方、ごめんなさい。書き始めたら、むっさ長くなるなーって事に気が付いてしまったもので。■■
関連エントリ
ファイブスター物語 リブート コミック 1-7巻セット (%コミックス)
- 作者: 永野護
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/03/09
- メディア: コミック
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