大好きな作家、中村明日美子先生の作品です。とにかく好きなので、ゆっくりゆっくり、一コマずつ鑑賞するかのように読みました。もちろんテンポ感を感じる演出を殺してまで、牛歩読みを貫いたわけではありません。ソコは一気に走り抜けて、一段落ついたところで、先に進まずまた戻るーみたいな読み方ね。
雑誌掲載時には1エピソードずつしか読めないわけですから、単行本をそんな読み方したってイイですよね!では、ネタバレを気にせず感想を綴ります。
基本情報
大学受験を間近に控えた佐条は、予備校帰りに草壁とのデートの時間を重ねていた。そんなある日、佐条の母が入院することになる。病院への往復、家事、そして受験に追われ、心身ともに疲れきっていた佐条は「今、お前に会いたい」と、だれもいない自宅に草壁を呼んだ…。
ほか、ハラセンの青春時代を描いた番外編『げに大人というものは』同時収録。
感想
もうね、なんつーか。
ん、んー……。
いや、やめとくか、な……。
……。
でも……、え、と……。
大好き!!!
はい、お約束は消化しましたので、始めますよ。
今作は、「同級生」の続編です。物語は「卒業生 冬」「卒業生 春」の2巻をまたぐ形で進行します。まあ、前後編て事ですね。「同級生」では、不器用ながら純粋な2人の恋が実り付き合い始めたあたりで終わっていました。
もう、自分の中の少年がギュンギュン飛び出しまくりで、ダダハマリした直後にまさかのアニメ化のニュース。
っっきったっ!!
ただ作品を認識するのが遅かっただけですが、タイミング的には最高です。ええ、新参者ですんで!!でも、ニワカとは云われたくないので、しっかり感想を述べます。
誠実な男子校生はもはやファンタジー
「同級生」でももちろんそうだったのですが、この「誠実な男子高生」という存在そのものが、すでにファンタジーです。
空想、創作、虚構、虚偽、仮構、フィクション、絵空事、寝言、妄想、願望、切望、希望、儚い、無念、諦め、理解、大人化、階段、昇る、シンデレラ、H2O、たっちゃん、とかとか。
読んでいると自分の高校生時代を思い出して、なんだか申し訳ない気分になってしまいました。こんな純粋な高校生男子は居ないと判っているのに、感情移入して胸が苦しくなりながら。
好きな相手を大切に想うこと、大切な相手には正直で居ること、間違ったと思ったら直ぐに謝ること、どれもこれも小学生でも理解できるシンプルなことですが、大人になる過程のどこかでスコーンと置き忘れてしまいがちです。
僕も無意識であったにせよ、誰かを傷つけたいと思った事などないにも関わらず言葉で大切な人を傷つけてしまった経験があり、草壁くんと佐条くんの会話を見ているとそんな記憶が蘇って来てソワソワしてしまうのです。
勝手に自分の想い出で苦しむ罠。
明日美子先生に文句を云うのは逆恨みってやつですから云いやしませんが、「あんた、大変な漫画を描いてくれたねぇ~」とは云いたいです。うそ!大好き!
それでいて実は……
そんな思いで読み進めながら、彼らの純真な恋愛に心が爆ぜそうになっているわけですが実は、ハラセン×佐条くん、が1番好きなんですよねぇ……。
もうこれは、実年齢が草壁くんや佐条くんよりもハラセンに近いものですから仕方ないのかもしれません。完っ全にハラセンに気持ちを持っていかれます。
実はこの一冊の感想で一番云いたいことはコレです。
彼の学生時代の「げに大人というものは」なるエピソードが、本作の中では1番好きなんですよねぇ……。どうと云うことのない、苦しい恋愛思い出話ですが心臓を鷲掴みにされてしまいました。嗚呼、切ない……。
ここに反応している読者も結構いるでしょうね。ハラセン・ファン。描写においても、鼻筋に特徴がある顔面の造形で、これもまた大いに気に入ってしまいました。
草壁くんをイジリながら、佐条くんへの気持ちは止まることがなく、でも草壁くんには決して勝てないことを判っていてそのことを草壁くんに云っちゃうクダリ、嗚呼、苦しい……。
完全にハラセンにヤられてしまいましたよ、ええ。
絵はやはり
最高です!云うことナッスィング!!特にイイのは、二人がキスをする時の舌の描写です。
なんでこんなにも少ない線とスクリーントーンなのに、なんでこんなにも柔らかでトロっと感を表現出来るのか!?
いえ、考えるのはやめです。なぜなら明日美子先生は最高だからです。(←?)
例によって、モブのテケトーさも光ります。級友の白目キャラくんでエピソード一本描いちゃうんだものなー。しかも内容が本っ当にテケトーなのも良いです良いです。
なんでこんなに押し引きが絶妙なのか理解出来ませんが、理由は最高だかr(ry
最後に
物語は下巻にあたる「卒業生 春」への引きで終わります。最初から続きにするつもりで作られていることがよくわかりますね。佐条くんのお母さんのことは「卒業生 春」の感想で書こうと思いますよ。
やっぱり、好きなものを語ろうとすると、いや好き過ぎるものを語ろうとすると、ただただ好きとしか云えないもんですね。それくらい中村明日美子先生の作品にほれ込んでいます。■■