Boys Love教習所

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「卒業生 春」を読んだ感想は『毎回別れるんじゃないか!?とマジで焦る』だった

大好きな作家、中村明日美子先生の作品です。とおくに読了した作品ですが、すぐに感想を書いてしまうと、なんだか作品への愛情が薄れてしまうような気がして自分の内側にため込んでおりました。

 最近、明日美子先生の作品を多く読んでいるので久しぶりに読み直して、改めて感想を持ちましたので書いてみようと思います。ネタバレを気にせず感想を綴るから未読の人類は注意しろよ(←)。

基本情報

卒業生―春― 同級生 (EDGE COMIX)

卒業生―春― 同級生 (EDGE COMIX)

 

佐条の受験まであと数日。学校の帰り道、将来について草壁は「養子縁組とかすんでしょ」と浮かれて話すが、世間はそんなに甘くないと猛反発する佐条。仲直りする間もなく受験会場のある京都まで向かうと、先回りした草壁が待っていた。試験前日、初めて二人きりの夜を過ごすことになり…。ゆれる青春時代の思い出を綴った人気シリーズ遂に完結!

感想

もうね、なんつーか。

 ん、んー……。

 いや、やめとくか、な……。

 ……。

 でも……、え、と……。

 大好き!!!

 お約束お約束。さ、始めますよ。

 今作は「同級生」の続編にあたる「卒業生」前後編の後編にあたる、一旦の完結編です。完結編……。うおおぉ!終わっちゃうぅ!無性に悲しいぃ!!寂しいぃっ!!!

 はぁはぁはぁ……。

 草壁くんや佐条くんともう逢えなくなるなんて……。そう想うと狼狽せずにはおれますまい。僕は創作物に対して、まーまー冷静な感覚を持ちながら接する事が多いんですね。映画は大好きですが、その制作する上での歴史的背景に興味が沸いたり、プロデューサの性質に共通性を見出して想像してみたりとか、メタな視点でも作品を楽しむタイプとでも申しましょうか。

 そう云う性癖もあって、キャラクタにのめり込むと云う事はこれまで殆ど経験せずにおっさんになりました。好きなキャラクタはもちろん数多いんですよ。サイロックとかゾッドとかバターカップとかDAWNとかルミナーラ・アンドゥリとか三日月宗近とかジェシカ・タビットとかヴェノムとかヒットガールとか大好きです。でもキャラクタそのものに感情移入する事ってものすごく稀でして。

 そのキャラクタが持つ設定とかビジュアルに主に惹かれるのであって、つまり創作物としてのクオリティにシビレル事が多いので、もしもこのキャラクタが生きていたとしたら?と云う想像で楽しめないんですね。

 だがしかし。

 中村明日美子先生は、僕の閉ざされた扉を何枚開け放てば気が済むんでしょうか。すっかりズル剥けです。もうどうにでも好きにして!と云いたくなってしまいます。いやMとかじゃなくて。

 草壁くん、佐条くんは、実在する人物のように感じながら読んでいますし、彼等の幸せを願って止まない気持ちは読後も残るワケです。ハッキリ云ってきしょいおっさんですが、仕方ありません。

 だってそう感じるんだものっ。

感情移入出来ると物語はコンナニモ疲れる

何を云いたいのかっつーと。前作にあたる「卒業生 冬」は、佐条君のお母さんが入院し、佐条君がとてもナーバスになっている状態で終わります。彼はたぶんお母さんっ子だったんじゃないかと思うんですね。自分の感情を表現するのが上手ではないだけで、お母さんの事をとても大切に思っているんじゃないかなと。

 そんな彼にとってお母さんの入院は、とても恐ろしい出来事だったんじゃないでしょうか。だから前作の最後のエピソードで、つい草壁くんに声を荒げてしまったり、ついにはお母さんにまで心無い嫌味を云ってしまったりしたんです、きっと。彼は怖がっているんだなと思いました。そんな自分を許せなくて自己嫌悪に陥る彼を見ているとなんつーか……。

 感情移入して苦しくなってまー疲れる疲れる!!

 苦しさばかりではありません。

 自分で何でもできると思っていたら案外何にも出来なくて、怖くなってやっと佐条くんは草壁くんを頼るんですね。恥ずかしさを理由にカッコつけていたのを、初めて脱ぎ捨てると云うか。こういうカタルシスもガッツンガッツン刺さってきます。

 良かったねー感が幸せな気分にさせてくれます。

 云っときますけど、まだココまでで冒頭ですからね!最初の10ページくらいの話ですからね!この調子でじっくり内容を揉み転がしながら感情の起伏に振り回されるものですからとにかく疲れます。汗かいちゃったりします。病気なのか?いやそうではないか。

 草壁くんに気持ちを開放出来た佐条くんはお母さんにも優しく笑えるようになるのですが、勢いあまって自分には男性の恋人がいる事を告げてしまいます。なにその展開!自分はノンケですし高校生時代の恋愛感情なんてカケラも覚えていませんが、なにこのドキドキは!?いやこの歳では動悸と呼ぶのか!?

 感情移入まー疲れる疲れる!(喜)

お母さんの顔

佐条くんのお母さんは草壁くんに逢いたいと云い、遂に病室で草壁くんと対面します。この時初めて、お母さんの顔が目を含めてしっかり描かれます。で草壁くんは3倍緊張しながらも、しっかり佐条君の事を好きだと云うんですね。でまあ、これはコレで物凄くいいシーンなんですけど。草壁くんの台詞では佐条くんは目がお母さんに似ているらしいんですね。

 でも、絵ではぜんっぜん似てないんです。

 明日美子先生の腕前なら、男女が違えども目を似せる事なんて簡単なのに、全然似ていないんです。もう目の形から何から全然違う。それだけじゃなくて、なんと云うか、全然優しそうじゃないんです。どちらかと云うと冷たさを感じるような目で、感情が現れないような目と云いましょうか、とにかくちょっと怖さを感じてしまったんですね。

 なんなんでしょう、これは。

 ただ単に、モブとしてキャラクタ造形をあまり凝らなかっただけ、と云う事なのかもしれませんが、それにしても、と思ったんですね。曲解すれば、明日美子先生は、女性なんか描きたくないのでは?とさえ思ってしまいました。いやそれは考え過ぎか。いやでも。後の話にも特に絡んでこないので、特に意図はないのかなぁ。モヤモヤします。

受験で、京都に

佐城くんは京都の大学を受験するためにまーまー勉強しています。一方ミュージシャンになる事を夢見ている草壁くんは、いわゆる受験疲れがないんですね。そんな2人は相手を想う気持ちはあっても不器用ですから、試験日直前に喧嘩してしまいます。

 この青臭くて純粋な感じ、最高のファンタジーです。高校男子は最も愚かで自己中心的な人類ですから(w)。

 で京都での試験日前日に前乗りしに来た佐城くんは、京都で草壁くんに遭遇してしまいます。草壁くんが、内緒でバイクを飛ばして逢いに来てたんですね///。

 ラブ過ぎるサプライズ!こういう事が出来るのは社会人経験5年目以降の男性か、全女性に限られていますから、これもファンタジー要素です!

 佐条くんの親戚の一軒家に、二人きりで泊まる事になる神展開です。これは。まさか。そうなのか。そうなってしまうのか。

 もうね。佐条君の誘い方が可愛くてエロくて最高です。

 この時の佐条君は絵的にとても美しく描かれています。明日美子先生の「眼」描写が冴えわたりますね。このエロシーンの導入は是非本編を観ていただきたいです。

まさかの佐条くん攻めターン

このエピソードはとにかく佐条君のターンでして。意外で超ラブい展開で佐条くんは草壁くんにフェラチオをしてあげる事になります///。クールを装う佐条くんが可愛いですなー。

 僕はノンケのおっさんなので想像するしかないのですが、お互いに好き合ってるとは云え男同士でしかも同級生の相手に対してこんな事をするのって、二人とも超絶恥ずかしいと思うんですね。嬉しさも当然ダンチに強いと思いますが、男同士であるが故の恥ずかしさレベルも凄まじいのではないかなぁと。

 男女の恋愛関係においては、性的な興奮や快感を究極的には共有し合えないトコロがありますから、それはファンタジー要素として機能しつつも、果てしない手探り感を完全払拭出来ないもどかしさがありますよね。

 経験的に学習しただけであって快感の経験は出来ないワケですから。

 それが男同士、女同士の場合は1段階近づくワケです。ファンタジー的解釈で取り繕う事が出来なくなる事のなんと恥ずかしい事よ。

 ま、それを二人っきりの空間で経験し積み上げていく、または飛び越えるところに恋愛の醍醐味みてーなものがあるんだとは思います。それはヘテロでもホモでも同じなんだろうなぁと。

 あ、ちなみに草壁くんが迂闊にも暴発してしまい、メガネ佐条くんに顔射と云うサービスカットでこの流れは終了です。明日美子先生、サービス精神旺盛ですね!

物語の終焉

ここから、ストーリー上のイベントはそうは多くありません。二人は男同士が一緒に生活していくと云う、未知の人生に不安を感じそれをぶつけ合い、それでも二人一緒に居続ける事を選び、将来の結婚を約束して卒業していきます。卒業式の日、佐条くんの歌声を聴いて草壁くんが心震わせたあの教室で、二人は初めて結ばれるんですね。

 読んで!とにかく読んで!

 こんな駄文でネタバレしたところで、全っ然作品の輝きは色褪せませんから!最高に幸せな気分になれるエンディングなので是非読んでください。もちろん「同級生」からですよ。

 ハラセンが自分の敗北を察して自滅するのは、ほんのり可愛そうですけどね。僕はハラセン×佐条くん推しでしたので。

 いずれにせよ、一旦完結です。わーん。悲しいわー。もっと読みたかったー。読了後、何度も何度もこの気持ちになるんですね。一連の3冊を読む度に毎回、二人が別れてしまいやしないかとハラハラし、もしかしたらバッドエンディングなんじゃ……と緊張し、ハッピーエンドに幸せな気分になって、彼等の将来を想像して果てしない気分に浸り、感情をブンブンに振り回されます。

 超疲れます!

 でも好きだから何度も読んじゃうんですよねー。一人エンドレスエイトを継続しつつ、スピンオフ作品も何度も読んでいます。

最後に

「同級生」の本編が完結してしまった事は本当に残念で悲しいのです。が、スピンオフ作品がまだ待っています。この、愛おしい世界を明日美子先生はまだしばらく描いてくださっている事に超感謝マジ感謝。

 このシリーズ以外の明日美子作品もおって感想文をポストしようと思います。ここまでただただ好き好き云ってるだけでの自慰駄文を読んでくださってありがとうございました。正直、マンガ作品にここまで心酔したのは初めての経験でして、もはや生涯ランキングが明日美子先生の作品で埋まり始めています。

 さー次はどの作品の事書くかなー。■■

 
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written by つよ