所謂ジャケ買い、タイトル買いと云うやつです。主には音楽コンテンツにおいて僕はジャケ買い癖があります。それなりに長年音楽好きでい続けているものですから一切の情報無しに音源を購入するケースは随分と減ったのですが、時々気まぐれに手を出してしまう事もあります。意外性を期待しているのかもしれません。
最近はBLコンテンツでもそんな欲求が沸き起こるようになってしまいました。全くノーマークの作家さんは山程いらっしゃるわけですが、正直云って雑誌の購読もしていない現状では新たな出逢いがなかなかありません。ネット上に散見されるランキング記事などを見て、良さげかなと思えた作品を手に取るくらいでしょうか。
と云うわけで、とある巨大書店の巨大BLコーナーを物色した結果、2冊の作品に手を出す事となりました。その内の1冊が本作です。さて。
基本情報
- 作者: 河馬乃さかだち
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2016/05/25
- メディア: コミック
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ピンサロの黒服青年、店いちばんの淫乱ちゃん。
舞台はピンサロ。
新人黒服・及川は、風俗嬢のフェラチオ研修で感じている姿を見られて以来、EDの先輩・花村にドキドキするようになる。しかしある日、風俗嬢たちが話す“今日、客にされたこと"を聞いた及川は、「自分も男にサれたい」と欲情し裏で自慰に耽ってしまう。
そんな及川を発見した花村は、乱れる後輩の姿に動揺しつつも、"男の後孔"に指を入れ、勃起している自分に気づいた――。ノンケED先輩×淫乱ガマンちゃん夜のお仕事ラブ!
感想
ノンケが、淫乱系オアズケM属性男子によって開花し、2人で享楽の園で放蕩生活を送るまでのプロセス。あ、まとめちゃった。まぁ、そんな感じです、実際にw。物語としては実にシンプルな内容で、話そのものにフックを用意しようとはしていない建て付けですから、こんな感じでOKかなと思います。
物語の意外性や目新しさはコンテンツのポイントではありません。ソコはむしろ安定的なテンプレート展開を提供しつつ、淫乱M男子を如何にエロく見せるか、如何に可愛く見せるか、に的を絞っています。その他はもう無視していると云ってもいいレベルだと感じます。
さかだち先生は、自分の作家性や持ち味と云うものをよく理解していらっしゃるんじゃないでしょうか。自分が描きたいもの、描けるもの、を両方ともよく判っているからこそ、この作品のような的の絞り方が出来るんだと思います。
異常なほど快楽に流されやすい人間性
基本的にこのようなキャラクタ造形は、BLの定番中の定番ですよね。快楽の波に全く逆らえない性質、快感への渇望が色々の障壁を軽々とジャンプさせてしまう性癖。BL界隈のテンプレートとしては、この性質を受けが持っていると望ましいですね。本作では可愛い後輩淫乱受けなのですが、バリエーションは他作品などで様々見てきました。年上理性的ギャップ萌え受けの場合などは、ノンケスタートも悪くないです。
理性は常識的規範を提示していながら、不本意な快楽のトリガーによってやだやだと云いながら享楽に沈む様は、BL作品の一つの見どころでしょう。本作は完全にこの方向性でした。
フーゾク店の店員と云う設定は、淫乱性が呼び覚まされるギミックとして活用される為で、その他の役割は物語的必然は殆どありません。しかし作品全体を包む、うっすら常にエロい空気感を演出する上では大いに機能しています。と同時に、性的な行為が日常化し、相対的にホモセックスに及ぶハードルを下げる事にもつながっています。
セリフに男のリアリティを含む
さかだち先生の事はあまり存じ上げないのですが、恐らく女性ですよね。セリフにおいて、男のリアルを描こうとするチャレンジ精神にナイスファイトと云いたいです。
このピンサロ業界女の子のピンキリ度すごいけど
たとえブ○イクだろうとやっていけるのは…
くわえられたら可愛くみえちまうのが男の性
ましてやごっくんされたら…
それ云う!?
このセリフに限らず、この作品では男視点で語られる「性癖に関する話題」の扱い方が、いちいちリアリティがあります。
及川くんが感じている様を可愛いと感じてしまった花村くんが、ついついアナルセックスで性欲を満たしてしまうクダリでも、頭の中では妙に冷静な心の声で独り言を呟いているなど、それ云う!?的な感じ。
このネームを女性が描いているんだよなあ、としみじみしてしまいました。快楽にめっぽう弱い淫乱系男子が感覚的に行動し誘い受けするのに対して、ノンケ攻めは情にほだされながらも冷静なわけです。この攻めの感じって、男から見たらあるあるネタなので、なかなかなアレです。
絵的な話
絵は少女漫画的です。顔面の輪郭線を繋がない描き方などもそう云う属性がありますよね。比較的安定した絵柄だと思います。特徴的なのは目の描き方で、想像をカルく超えて横長です。眼頭が鼻梁にくっ付いている感じ。この目の輪郭も繋がっていないんですが、独特の雰囲気がありますね。この辺りは好みの分かれるところでしょうか。
僕は最初はかなり気になってしまったのですが、気が付いたら慣れていました。このフワフワとしてカッツリ輪郭がない線が、エロシーンでは際立つ効果を持っているようでして、この作品のエロシーンは見所が多かったです。
最後に
ゆきずりのBL。期待以上の作品だったので、ほっと一安心です。さてもう1冊あるわけですが、この感想はまたいずれ。■■