Boys Love教習所

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「空と原」を読んだ感想は『オトナも幸せになって欲しいよね!』だった

何度も読んでるんですよね、この作品も。明日美子先生の作品はどれも何回も読んでいるのですけども、ちゃんと数えたワケではありませんがもしかしたら一番読んでいる作品はコレかも、しれません。原×佐条おしの僕としてはそらそうか、ってなもんです。ではネタバレ満開で書きますので、未読の方は自己責任でドウゾ。

基本情報

空と原 同級生 (EDGE COMIX)

空と原 同級生 (EDGE COMIX)

 

原 学(はら まなぶ)、37歳、男子校教師、独身、「生徒には絶対手を出さない」というポリシーを持つ男。
3年間の片想いから脱するために訪れたゲイの集まるクラブで若い 男に出会う。
後に彼は、原が勤める学校の新入生、ソラノだと分かり…??
不器用なオトナ、永遠のアテ馬と呼ばれる原先生に春は来るか! ?

ロングセラー [同級生]と[卒業生]のスピンオフ連載、堂々の単行本化! !

感想

やはりハラセンの事で心を痛めていた腐女子諸姉は多かったのですね!「卒業生」発表後、ファンの方々からハラセンを幸せにしてあげてください的コメントが多く寄せられことで、本作品の企画が立ち上がったそうです。帯に書いてありました。

 そりゃそうでしょう、最後まで若い二人を想って、いや佐条君の幸せを想って自分の恋心を押し殺したままでしたからね、ハラセン。「大人対応」って実は自分が苦しくなる方法だからね。辛いよね。偉いよね。

 僕としてはハラセンに押し倒されて→あっなにを?→いいから黙ってなさい→や、だめっあっ→ほらイイ子だ、的展開を期待していたんですが、明日美子先生はとてもお優しい方なので、そう云った意地悪はなかったんですね。あくまで、若い2人のゆっくりお互いを大切にする恋愛を邪魔しない程度に、適度な当て馬感だけをハラセンに担わせたわけです。

 ハラセン、カワイソス……!

 ハラセンはハラセンで押しが弱いと云うか、まあつまりヘタレキャラです。年齢こそアラフォーですけども、完全にヘタレておりまして「教え子には手を出さない」と云う建前上の云い訳を準備してしまうようなヘタレっぷり。そこがなんとも愛おしいワケですが、もどかしさもまた感じていたのは事実です。

 ヘタレつーかナイーブ?

 愛する左条くんが少しでも困るような事は、彼には出来ません。と云う事は左条くんから激烈プッシュがあってアプローチされまくりにでもならない限り、ハラセンの恋愛成就はあり得ないんですよね。

 詰んだわ。乙。

学校を離れたハラセンも変わらずヘタレている

さて左条くんが卒業してしまった後、左条ロスで腑抜けになってしまったハラセンは、出来上がった卒業アルバムに写っている左条くんを眺めながら、このままじゃあいかん!と一念発起し、あまりに若々しい打開策に手を出します(アルバム見て左条くんについつい目を止めてしたうハラセンが可愛いです)。

 で、クッソひっさしぶりにゲイ界隈に顔を出して若いツバメをお持ち帰りしちゃうかなー、みてーな。

 そこで早速声をかけた相手は左条くんとは全然似てないタイプです。が、眼鏡かかけてんですね。サッサとホテルに連れ込むも、眼鏡を外す仕草で左条くんを思い出してしまい、結局なにも出来ずに撃沈とかwww可愛い過ぎるやろハラセンwww自己嫌悪して街中で1人叫ぶとかwww

 で結局声をかけてキスまでしたけど何もせずにリリースした男の子はハラセンの学校の新入生だったことが分かるんですね。てことは普通に考えて15歳?

 犯罪確定ギリセーフ!

 ここまで書いていて気が付きましたけど、ハラセンも含めて「同級生」の主要登場人物は皆、イノセントとはいかずともピュアなんですよね。人の気持ちを考える事に全員手を抜いていない。結果としてハラセンはヘタレているんですが、これは優しさの別名でもありますね。

ハラセンの人間性を描き出す作品だった

ゲイ・パーティで知り合った若いツバメの「ソラノ」くんはゆるやかにハラセンの事を好きになっていきます。ハラセンの身の回りの人々、や身の回りの人々が抱えている問題を見つめながら、ハラセンが持っている純真さやカッコつけの部分(ここ重要)、が実に愛おしいって事に気が付く、その様を追いかける形になっています。

 ハラセンの佐条くんへの想いなんかもアッサリと見抜き、せっせと後押しをしようとするのはなんともけなげに見えて、僕のようなおっさんには可愛く見えてしまいました。

 ソラノくんはどちらかと云うと草壁くん寄りの人間だなぁと思います。

 自分の気持ちを隠そうとはしない、と云うか、自分の気持ちがあってこそ総てに意味や責任が発生する、と理解している感じ。これはハラセンとの対比として実に判りやすいんですよね。

 教師であり、男子校の音楽教師、と云う立場のハラセンは、経験上教師と生徒の同性愛の行く末は明るいものではないと知っています。だからこそ、彼は規範の中で生き続けていられるし佐条くんにも結局想いを告げず終いでした。

 ある種、「オトナ」の記号化ですよね。

 シガラミや付き合い、慣例、常識、などによって自己犠牲が日常となりその事に気が付かなっていくオトナ。緩やかに死んでいくが如く。ハラセンは救いようのない程に日々に絶望してるようには描かれていませんが、このまま愛のない日々を過ごしていく先には果たして……、と感じてしまうのです。

 ハラセンの学生時代の想い人であったかつての音楽教師を再登場させたのはなんとも驚きでした。云わば初恋の相手、でしょうか。たった一度キスをしただけで結婚してしまったあの先生を、再度登場させるなんて!

 物語上の役割としては、ハラセンの人を想う気持ちの純粋さを浮き彫りにする事です。またソラノくんがその事に触れ、自分はハラセンの事を本当に好きだと気づくきっかけですね。他人を想うあまり自分は身を引くハラセンのオトナ対応がソラノくんにはもどかしくて許せない。この構造は若者が必ず直面する青春時代の命題のようなものでして(w)、まあ恥ずかしくて胸アツでたまらんモンがあるワケです。特におっさんなどには。

 物語は、ハラセンとソラノくんの恋人期間を甘く描くものではありませんでしたが、ちゃんとハッピーエンドになっていてほっとしました。明日美子先生はちゃんと読者の希望に応えた形です。あー良かった。オトナはオトナの社会があって、いつもいい事ばっかりじゃないんだよね、さ明日も授業だ、みてーな終わりになったらどうしようかと思った!

37歳独身男と云うスペックについて 

ところで37歳の独身男ってのはどの程度存在しているんでしょうか。と思って調べてみると、最近は生涯独身てのも珍しくないとか。ちなみに僕は37歳の時独身だったんですよね。離婚して、ですけども。今は2度目の結婚で娘が産まれ、毎日が幸せで満足していますが、結婚する迄の独身時代、1度目の結婚の日々やその後の独身時代が幸せではなかったのかと云うとさにあらず、十分満足した幸せな日々を過ごしておりました。

 順風満帆とは到底云えないような人生ではありますが、それなりの幸せを感じる事が出来たのは単なる楽天家の得意技だったのかもしれませんね。

 僕は、今手元にあるもので最大限楽しもうと思うタイプなので、お金がないならないで、時間がないならなで、嫁に逃げられたなら逃げられたで(w)、それなりに楽しもうとする事を自然に実行出来ていたようです。

 離婚後は一時期女性に対して酷い時期(謝)がありましたが、今のお嫁ちゃんに出逢えたのでコッチに帰ってこれました。ラッキー。

 とまあ自分が実際に37歳で独身だったもので、ハラセンを自分に置き換える事は

実に容易なんです。そこで思う事としては……

 もっと遊んでもいいよ!

 ハラセンて、カッコイイじゃないですか。鼻梁が通った個性的な爬虫類顔で、目付きも鋭利でいい感じ。劇中登場するゲイパーティに参戦する時のオールバックとか、むっさカッコイイし。あの頃の自分を振り返るともっと子供でちゃっちー存在だったので、ハラセンがオトナに見えてしかたありません。

 あ、ハラセンやっぱカッコイイわーって事をただただ云いたいだけです、ええ、ただソレだけです。

最後に

同級生関連スピンオフはまだ2冊存在しています。またいつかその感想をアップロードする事でしょう。明日美子先生信者の僕は日々彼女の作品をただただ読むのです。■■

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written by つよ