Boys Love教習所

BL世界や雑談をだらだら綴るブログ

『「腐向け過ぎて萎える」とは何か』を読んで自分はBLに何を求めているのか考えた

物凄く価値のある文章に触れた気がしたので、備忘録的に書き残しておこうと思います。おっさんは健忘症が進行していても、その事に自分で気が付いていない可能性もありますのでね。

 件のエントリはコチラです。

 とても文章がまとめられていて読みやすいですね。こうやって、順序立てて考察を述べていただくと、僕などは何度も胸と膝をポン!と打たれてしまい、とても嬉しくなってしまいます。

「腐向け過ぎて萎える」のを男性が理解すると云う事

これは、このブログを立ち上げて程なく目にした、腐女子諸姉のつぶやきなどに見られる傾向の一つでした。この事は男性である僕にとってしばらく謎でしたが、男性であるが故に違った視点からこの事を観察出来るので面白いかもしれない、と云う期待にも繋がりました。そこで数々の仮説を立てていたのです。

 その経緯や見立てについてはもはや書く気が起こりません。理由はもちろん、その内の1つが、他者によって語られる事により僕自信すっかり得心したからです。

ターゲットが自分であるエロ・コンテンツ、に対する拒否反応

大筋では承知していたんです。男性にとって全くどうと云う事のない些細な出来事が、女性にとっては多くの場合で「許されていない」と云う事実。この事は、個人の感性や主義によって簡単に覆す事の出来ない程には社会的な意味合いが強く、単に「腐女子」と云うざっくりカテゴライズでは詳細を語れない、と云う理解をしていました。

 ま、拘りのある何かについて、大きくカテゴライズすると概ね反発される系の話ですね、よくあるやつ。

 僕とて「ああ、メタルファンってのはそう云う事を云いたがるよね」みてーな事を云われた瞬間に全力で精神的ファイティングポーズをとってしまうものです。あ、ちょっと例えが違うかな……。

 いずれにせよ、まとめて一括りに出来るほどシンプルな動機じゃないよなと思っていたわけです。

すなわち、BLを読むとき自らの視点をどこに設定するかは、読者の裁量に委ねられているのだ。自己を自己の身体から際限なく拡張して攻めあるいは受けに感情移入するという人もいるだろうし、背景に書き込まれたモブや二人の男が寄りかかる壁に感情移入する人もいるし、神の視点で完全に人界から己をシャットアウトする人もいる。 BL作品に没入するBL消費者は、「自分」を好きな濃度で希釈できるのだ。

「腐向け過ぎて萎える」とは何か - SEPPUKU Web

 しかし男である僕は、「自分」を好きな濃度で希釈出来る、と云う理解には至っていなかったのです。僕が迷い込んでいた迷路は「どの視点に自分を当てはめて楽しむのか」と云う問いでした。そのバリエーションをある程度カテゴライズして、その詳細に向かうような方向性を考えていたんですね。

 そのバリエーションの中で、自分を存在させないと云う選択肢もあろうとは。自分がどこに存在しているか曖昧なままで居続ける選択肢、と云う事になるでしょうか。ココが色々の疑問を解決するキーワードでした。

 ストレートの男にはそう云う事が滅多に起こらない、と云うか必要が生じない、と云う日常を繰り返してきたので、想像力の総動員をもってしても到達出来なかったんでしょう。

 となると。

 2次創作界隈において、自分をさらけ出して漫画や小説を発表する事の、なんと勇気の要る事か。去年僕は勉強の意味合いを込めて、生まれて初めて刀剣乱舞のオンリーイベントに出向きましたが、かなり迷惑をかけてしまっていたような気がしてきました。何にも気にせず売られている作品を物色していたんですよねぇ。

 そう云うイベントに初参加だったものですから、動き方をまるで判っていなかったから、なのですが。女性がエロ・コンテンツを作り出して自ら販売すると云う画面の意味合いを、当時は全く考えもしていませんでした。

でお前はよ?

僕がBLコンテンツをどう楽しんでいるか、と云う点に触れておこうと思います。

 僕はBLコンテンツを楽しめるんですね。概ね商業BL作品です。ここは明確に好みの差がありまして、プロの作品としてある一定クオリティに達したものでないと、心底楽しめないんです。

 プロとしての矜持が地下水脈にある作品。それは程度の差はありこそすれ、エンタメとして、提供する側とされる側の間で共通の理解が成立しているもの、と云う意味です。プロは売れるものを創らなくてはなりません。

 一方、同人誌などの作品を否定したい気持ちは特にありません。ソレはソレで楽しい事を別ジャンルの経験として知っています。しかし僕はBLの同人誌はあまり楽しめないんですね。まだ出会っていない、と云えるかもしれませんが。

 で、僕はBLコンテンツをどう楽しんでいるのか。

01.感情移入の矛先

誤解を恐れずに告白しますが、僕としては商業BL漫画を読む際に「受けの視点」で物語を眺め楽しんでいます。性的趣向として僕はストレートでして、女性にしか性的魅力を感じません。若い男性を見てどんなに美しくても、男性として性的魅力を感じる事は今まで皆無です。

 幼児以外のリアル男性に可愛いと思った事さえありません。幼児を可愛いと云う感覚も性的な意味合いではなく、いわゆる子供が好き的なやつです。

 そんな僕ですが、「受け視点」で物語を読み進める事に楽しみや面白味を感じています。コレを説明すると「ファンタジー恋愛物語」と云う表現が概ねしっくり来そうです。

 ですので、どの商業BL作品を読んでいる時も、基本的には「受け」の気持ちで読んでいます。

02.ファンタジー恋愛物語としてBLを読む

女性にとっては違うのでしょうが、男である僕にとって男性同士の恋愛は、かなり身近な絵空事です。限りなくリアルなファンタジーとでも云いましょうか。

 僕としては、そのファンタジーたる部分に大きな魅力を感じているワケなので、自分としてはリアルに想像出来ない「受け」にこそ、BLの醍醐味があるワケです。

 「攻め」の視点で読み進めるのだとしたら、それはストレートな性的趣向に比較的近いので、ファンタジーでありながらちょっと切れ味が鈍るんですよね。それだったらわざわざBL作品を手に取る必要もないなと感じてしまいます。

 もちろん「同性の恋愛」と云うケースにのみ発生するようなシチュエーションや障壁などは「異性の恋愛」のソレとは違うので、単純に「攻め」が異性愛における男性視点に置き換わるワケではありません。

 しかし、より能動的な性質に描かれがちな「攻め」は、男性視点として違和感を感じにくいのも間違いないワケなので、やはりファンタジーとして楽しむうえでは先鋭化の妨げになるんです。

 ですので「誘い受け」なんて概念を知った時は、ワクワクが止められませんでした。なんじゃそれ!?と。

03.男から観るBLのエロ・コンテンツ的価値

男である僕にとって、判りやすいエロ成分や判りやすいエロ風味の在る無しは結構どうでもイイ事です。このスタート地点からして大きな意識の違いがあるのかもしれません。男にとってのエロ・コンテンツは、もはや社会が認めた必要条件のようなバックアップ体制が完備されています。

 男子たるもの色事に興味持つべし、的な。

 僕は幼い頃から、このような男のエロ認可みたいな空気が凄く嫌いでした。思春期のエロに対して興味を大いに持つ時期でさえ、なんとも落ち着かない気分だったのを覚えていますし、今でもその感覚はあまり変わりません。

 ただ、とにかく周りからはエロ成分についての過度なリアクションはないワケなので、エロ・コンテンツに対してのガードは相当緩いです。男全般に共通した感覚でしょう。

 そういう状態でBLを楽しむ場合、「エロ部分が目的になる事」があったとしても、唯一無二の目的ではありませんから優先が下がります。最悪、もっと手っ取り早い手段*1は別で存在しているので。

 性衝動の解消を目的とせずにBL作品にエロ・コンテンツ的価値を見出すとしたら、結果的に恋愛物の形になった、と云う感じなんですよね。登場人物達がエロに踏み入るプロセスを楽しむだとか、エロか否かのギリギリ立ち止まっている状態を楽しむ、とかです。これって、恋愛を物語にした時の娯楽要素として充分機能しちゃったんですよね。

04.BL作品に求めているエンタメ性

僕などはそこそこにいい歳のおっさんなので、直球で性交シーンを描くエロよりも、より巧みな語り口と演出によって直接的なエロ*2を描かずとも表現されるエロのほうが断然楽しめるわけです。伝わりますかね、この感じ。

 そう云う作家性を二次創作同人誌でまだ出会っていないんです。不勉強なもので数も大した量を読んだワケではないのですが、傾向としては一般流通に乗る商業作品に比べれば無法地帯に近いワケなので、自ずとエロ描写も開放的な印象です。

 結果的に商業作品との住み分けにもなっているのかもしれません。単なる無知である可能性もあります。少なくとも、僕がBLコンテンツに求めるエンタメ要素は商業作品で確認出来ました。また、表現として平易な手段を採用している作品は低評価をしがちですが、これは単なる僕の好みですな。

まとめ

長々と書きましたが、僕がBL作品に求めているものはこうです。

  1. 「受け」視点が楽しい
  2. 根本的にファンタジー恋愛話を求めている
  3. 判りやすい手段で表現されたエロはBL以外の作品で代替可能なので別にいらない
  4. 巧みなエロ表現、隠されたエロ表現が好み

 自分がコンテンツ内に存在していたとしてもなんともない、おっさんの独り言でした。■■

俺たちのBL論

俺たちのBL論

 
BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす

BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす

 
BLカルチャー論: ボーイズラブがわかる本

BLカルチャー論: ボーイズラブがわかる本

 
あの頃のBLの話をしよう [BLインタビュー集]

あの頃のBLの話をしよう [BLインタビュー集]

 

*1:もっと手っ取り早い手段:抜き用のコンテンツの事です。

*2:直接的なエロ:あ、なーるせっくすの注挿部分や男同士のふぇらーリなど

Boys Love Institute
written by つよ