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Boys Love Institute

ノンケ男がBL世界や雑談をだらだら綴るブログ

「美しい野菜」を読んだ感想は『男は雌化した時が最も色っぽいのか?』だった

Comic 松本ミーコハウス

松本ミーコハウス先生の作品を初めて読みました。きかっけは、かの三田麻央パイセンのオススメ記事です。彼女のキュレーションを信じてみたくなったのです。その中でも未読であり表紙イラストの雰囲気に反応出来たのがこの作品でした。さて、中身はどうだったのか。いつもながらネタバレ満開で書くつもりですので、未読の婦女子諸姉は御注意を。

基本情報

美しい野菜 (1) (onBLUE comics)

美しい野菜 (1) (onBLUE comics)

 

小説家くずれの太郎(たろう)は、自炊ナシの不健康生活を送る31歳。ある日、ハツラツとした八百屋・治樹(はるき)と出会い、家呑みをすることに。酔っぱらった太郎は無自覚にエロ発言を連発し、ゲイの治樹の理性は崩壊。ノンケだというのに、太郎は「挿れられる」セックスにいやらしく乱れる。その後も肉体関係を続ける2人だったが、太郎のMっ気を察した治樹は甘くサディスティックに責め始め──。描き下ろしも収録! 年下さわやかS×地味系ど淫乱Mのだめ大人、性生活!

感想

まずは表紙に惹かれて(いわゆるジャケ買いですね)手にとったんです。色鉛筆らしき画材で薄い描線で表現されたM男の快楽を予感させる表紙です。この絵からなんとも儚げなエロを嗅ぎ取ったものですから、静かで内省的な物語を期待して扉をめくりました。がしかし、期待のモノとはやや違った内容でした。

淡白な画風

なんでしょうかね。勝手に想像していたのは、淡い細い線で繊細に描写された作風だったんですが、全然違います。いきなり冴えない風貌の長髪無精髭めがね男の登場です。全体的に線も少なめですが繊細と云う印象よりは淡白な感触です。

 あれ?これ大丈夫か?

 一瞬不安がよぎります。もしかしてヤってもーたのか……?開幕直後は多少の不安を抱えながら物語を読み進めました。主人公の永井太郎(ながいたろう)くんは31歳の売れない作家です。日々の生活のために、安い単発の雑誌ライテイングの仕事なんかを請けて小銭を稼いでいるのです。

 設定地味じゃね?

 不安は拡大し続けます。ジメジメとした自虐的な内面世界を旅するような話だったら好みじゃないなぁ……、なんて思いつつ。

 しかし、太郎くんが日々の生活に焦りや嫌気を感じており、この循環に辟易している様はさりげなくも丁寧に積み上げられていきます。内面を描きはするものの、単純に暗くジメついた表現ではありません。生き方が不器用な主人公の登場は、成長と変化の予感につながります。

イノセント年下攻めと淫乱ヘタレ年上受け

もう一人の主人公、藤田治樹(ふじたはるき)くんは、明るいホモの八百屋です。彼はどうやら高校生の頃からホモを自覚していたらしく、自分の性癖にくるしくむ事なく日々を明るく生きています。好きなものは好き、と発信出来るタイプのイノセント・キャラクタですね。

 明るい表情、あかるい言動、イケメンで筋肉質の肉体、と云う感じで、太郎くんとは真逆のキャラクタ設定です。

 そんな二人が酒の勢いでホモセックスに雪崩れ込んでしまいますw。

 まあ、こう云う展開はもはやテンプレなのでサラリとスルーしていきますよ。ちなみに、太郎くんはノンケです。最近は僕も「酒を飲んで可愛くなってしまうタイプの年上男の良さ」を随分と理解できるようになってきました。もちろん現実世界の男にはなんにも感じないのですが。

 BL漫画における最大の見所のひとつは男の可愛さでしょう。

 出来れば可愛さと無縁な、またはかけ離れた存在である男が、性癖や理性をジャンプした結果、可愛くなるのが望ましいですね!

 本作のヘタレ年上受けの太郎くんは、ほんっとにヘタレで地味な存在です。このマイナー感が強ければ強いほど、ホモ空間に飛び込んだ時の落差が際立つわけなので、これはなんとも正しい演出ですよね。

 太郎くんは女性を付き合ったこともあるノンケとして登場します。が、治樹くんの導きによってホモセックスに及んだ際は、簡単に自意識のカセを飛び越えてしまし淫乱雌化します。正に雌化。これがまあ、色っぽいんですよねえ。

 快楽に支配されてだらしなくなっている年上男がお好きな腐女子諸姉は、是非とも呼んでいただきたいです。

セフレと云う背徳

この物語の構造として巧いのは、ヘタレ年上受けの太郎くんが対人関係、恋愛関係について臆病であり、へたくそである点だと思うのです。自分の内面をさらけ出す事への恐怖は、他人との関わりを極力薄い状態に保とうとします。拒絶が怖いからですね。

 太郎くんは、ホモに対して「よくない事」がと云う認識を持っていて「付き合う気はなし」と云い切ります。つまり、いくら治樹くんとの享楽的なホモセックスに興じていたとしても、これは自分にとって大事な恋愛関係ではない、という立場を保っているんですね。

 ホモの関係でありセフレの関係である二人の関係性は、自分をさらけ出してぶつかっていく必要のない背徳の遊びである。

 このスタンスを維持出来れば、自分の内面世界(感情)は一旦の安全地帯に逃げ込めます。逆に云えば、だからこそホモセックスの最中は後先考えずに快楽に没頭出来るって事なんでしょうか。大事なモノではない、背徳的な行為だ、自分の内面が傷つくことはない、というポーズと共に。

セックスの立場と精神的立場

本作は、ホモである治樹くんと元ノンケの太郎くんの話ですが、ホモセックスにおいては完全に治樹くんの主導です。行為の最中に色々と想いを巡らせる余裕も、治樹くんにしかありません。

 太郎くんは基本的にズルズルに感じまくっていますから。

 ただし、セックス以外の精神的な関係においては、実は太郎くんが二人の関係を牽引しているように感じます。しかも、太郎くんは無自覚に。今後の物語は全然違う流れなのかもしれませんが、結局二人の関係の未来を握っているのはいつも太郎くんである、と云う展開を期待したいんですよね。

 精神的肉体的M属性を開花させた太郎くんですが、Mだからと云って必ずしも総てが受け身とはならない、って云う感じ、よくないですか。それこそ、恋愛の駆け引きめいた展開が期待出来ると思うんだけどな~。

最後に

この作品、続巻が既に発売されています。これは読まないとね。二人はこの後どうなっていくのか、見届けたいと思います。■■

[まとめ買い] 美しい野菜(onBLUE comics)
 
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written by つよ