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Boys Love Institute

ノンケ男がBL世界や雑談をだらだら綴るブログ

漫画「王子と小鳥」を読んだ感想は『格差萌え、なのか?』だった

Comic 山中ヒコ 商業BL スパダリ 奴隷

初めての作家さんです。と云うのも、とある取引先のメーカー役員様に「最近BL研究してるんですよねー」的なお話をしたところ、奥様がBL系薄い本を制作されているとのことで。つまり同好の士だったわけです。でおすすめの作品をうかがったらお返事いただいたのが本作でした。いつものように例によってネタバレ満開で書きますので、ご注意くださいませ。

基本情報

王子と小鳥 (花音コミックス Cita Citaシリーズ)

王子と小鳥 (花音コミックス Cita Citaシリーズ)

 

 貧乏美大生・鈴木圭一が目覚めると、そこは砂漠の国のオークション会場だった。借金のカタに奴隷として出品された彼が、強欲な第一王子の手に落ちようとしたその時、その弟であるハーリド第二王子によって買い上げられる。ハーリドの奴隷となった鈴木は日々逃亡を企てるが、王子の優しさに少しずつ惹かれはじめ…。表題作他、心の欠けた大人と、彼に買われた少年の恋を描く「淋しさの値段」を収録。苦悩しながらも真実の愛を手に入れる恋人たちのドラマチックコミックス!! 王子と鈴木の後日談描き下ろし付き ฺ

感想

本当に全く前知識なしでこの作品を手に取りました。表紙も淡泊な印象ですが、雰囲気を大切にしておられるのかなーと思いながら扉をめくります。そして突然アラブぽい衣裳の富豪が登場。こ、これは!?

 遂にスーパーダーリンものか!?

 そうなんです、BLを掘り下げ始めて1年ちょっとですが、いわゆるスパダリものを一冊も読んだ事がなかったんです。一冊もですよ。これは今となってはBLの歴史的な流れもほんのり知ったので、昨今の流行りと云うかスパダリものが古くなってきている背景もある程度知識として理解出来ます。

 普通に書店で平置きになっている新作を手に取ると、スパダリにはまず当たりません。腰乃先生の作風人気が裏付けるように、比較的リアルな日常、誰にでも起こり得そうな等身大感、がマーケットの主流のように感じます。

 奥付を見ると、2009年初版ですからちょっと前の作品なんですね。開始4ページでそんな事を思いました。

設定は平易だが恐らくソコはポイントではない?

結構、身も蓋もない設定なんです。今の時代にこれか、と云う第一印象を持ちました。借金のカタに奴隷としてアラブ界隈の国の第二王子に買われる、ですよ。まずはこの設定が物語の最初に提示されるので、読み進める上でのリアリティラインがどこら辺かを理解出来ます。

 「設定とかはまあいいじゃん」系。

 これは別に、劣っているとか稚拙だとかネガティブな意味で云っているのではありません。その部分が描きたいドラマの中心ではない、と云う性質の宣言に過ぎませんから。設定はテンプレで流しておいて、登場人物の会話や心の移り変わり、感情の変化にフォーカスしたいと云うケースは、BLに限らず珍しい事ではありませんし。

 では、描きたかった(と思われる)のは何か。読んだ上での僕の想像でしかないのですが、ヒコ先生は格差萌え属性の作家さんなんじゃないでしょうか?

支配と云うキーワード

同作品に収録されている短編も、主従がベースのBL漫画でした。単純に信頼関係のある主従ではなく、支配する者と支配される者の関係性が総ての土台として存在しているものです。

 この「支配する側とされる側」と云う境界線を飛び越えるのが醍醐味。支配する側は圧倒的に強者である必要があるので結果的にスパダリではありますが、支配される側の弱者と容易く意思疎通してしまってはドラマに深みが出ません。

 そうした都合もあってメインの物語では、言葉がお互いに通じない状態スタートです。感情の微細な起伏を言葉と云うツールでやりとりしてしまっては困るからなのか。登場人物達が何故の嵐に苛まれる中「好き」と云う感情が、総ての都合を飛び越える唯一解として発見される事は、なかなか萌えるワケです。あ、僕の解釈では、ですけど。

 支配する側の理屈、支配される側の理屈がそれぞれに歴然と存在している事も重要でしょう。

テンプレートの価値

BL作品を多く読むようになってから知った事ですが、BLに限らず女性に向行けたエンタテインメントの特徴の一つに、テンプレ展開の価値が高いと云う件は最初驚きました。もちろん男性向けのコンテンツにもそう云った特性があったりもします。特に時代的に新しいワケでもないのを承知の上で、それでも女性向けコンテンツのソレは違った価値観が存在しているように感じました。

 当然ながら、質の優劣の話ではありません。性質の差異の話です。

 好みのテンプレートにお気に入りのキャラクタをアサインして、その環境下で動くキャラクタを愛でたり苛めてみたりする遊びは、正に二次創作の方法論。BLと二次創作が強い結びつきを有している事も関係してか、テンプレ展開の価値はBL界隈においてやはり重要な要素だなと思います。

 僕としては、テンプレ展開が特に好きとか、こういったテンプレが気に入っていると云った趣向がないものですから、その部分での込み入った価値や萌えポイントについては、恐らく100%楽しめてはいないような気がします。

 本作品で云えば、いずれの話もハッピーエンドで終わらずある種の切なさを残す形になっている部分が一番好きだったりします。純愛モノ、と云う理解で。

最後に

オススメいただかなかったら、まず手に取らなかったであろう作品だったので、とても興味深く読みました。今後も色々の先輩諸姉から鞭撻をいただきたいものです。さて次はまた新しい作家さんの作品ですよ。■■

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written by つよ