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「春風のエトランゼ」を読んだ感想は『カンナ先生の闘いはココからである』だった

紀伊カンナ先生のデビュー作品「海辺のエトランゼ」を、僕は絶賛しました。マイルドな味わいとサラリとした語り口が、非BLファンにも勧めやすい秀作であると。

 事実、すっかり人気作品でして、物語の続きは「on BLUE」誌にて連載されています。つまり本作は続編にあたる作品なわけで、その第一巻です。

 デビュー作でいきなり人気を博した作品の続きですから、読者の期待が高い状態からのスタート。

 さて、内容はどうだったのか。ネタバレを気にせず書き踊りますから、未読の腐女子諸姉はご注意くださいませ!

基本情報

春風のエトランゼ(1) (onBLUE comics)

春風のエトランゼ(1) (onBLUE comics)

 
小説家の駿は、沖縄の離島を離れ
故郷・北海道へ向かっていた。
島で出会った年下の恋人・実央を連れて。
かつて、幼なじみとの結婚式を
ゲイだと言って逃げ出して以来、駿は実家とは絶縁状態でいたが、
父親が病気と聞き、一度帰ることにした。
迷惑をかけた実家に男の恋人。
駿にとっては気まずい帰省だったが、
親を亡くした実央には――。

感想

前作「海辺~」でも書きましたが、相変わらず背景の描き込みと演出がとにかく素晴らしいです。もうええってわかったから、と云いたくなる程、コレデモカ!コレデモカ!と、作画に無理のない超安定した技術で世界が描かれます。

 見ているだけで気持ちいいページ。

 これは褒め過ぎでしょうや?いや褒め過ぎではありません。世界は、本当にソコに存在しているのだ、と云う認識は日々の生活の中でわざわざ取沙汰することが少ないワケですが、この作品を読んでいると世界の息遣いを感じるのですから不思議です。

 リアリティなるものはリアルなものから感じるのではなく優れた創作/模造品から感じられるのである、とは僕の言葉ですが(←ぷ)正にその通りだなーと自画自賛したくなりました(←えっ)。

ゲイとしての苦い記憶が描かれる

前作のラストは、駿くんが長年疎遠だった家族の元に帰る事を決意し、実央くんを連れていくところで終わっていました。その続きですから、旅路からスタートするワケです。そんな中、駿くんの学生時代の苦い想い出や、出版の仕事をしていた頃の人間関係などが緩やかに紐解かれていく展開です。

 駿くん、色々あったんだねえ~。

 自分の感情に嫌気がさして、自分の事を嫌いになっていた駿くんが、なんとも不憫です。ゲイが日本の日常の中で生きていく事について、この作品は目を逸らしてはいないんですね。

 僕自身はノンケですから、セクシャルマイノリティの苦悩や葛藤は、理解出来るような生易しいものではないんだろうと思いますが、少なくとも「想像」は出来ます。

意外と頻繁に想像するんですよね

自分がノンケである事を心の中で指さし確認する感じ、と云えばいいんでしょうか。BL漫画を読むたびに、ああコレは自分は興奮出来ない部分だなーとか、この楽しみ方は男として観ているワケじゃないんだなーとか、なんです。

 そんな僕ですが、家族と同性愛者の関わり方については、全く見当がつかない範疇なんですよね。想像も出来ない感じ。

 自分がもし同性愛者だったとして、両親にその事を告げるだろうか、告げる勇気はいかほどのものなのか、どんな反応をされるのだろうか、ひたすら隠すだろうか……?

 駿くんの葛藤や苦悩は、あまり具体的な描写では描かれていません。シチュエーションは提示されるものの、彼の心の声は読者の解釈に委ねられます。

 めぐり廻って実央くんに出逢い、一緒に絶縁の実家に帰る事になった駿くんは実央くんに云います。

なるようになるさ

 何気ない描き方ではありますが、連載1話分の最後のページに書かれたこのセリフが、駿くんのこれまでの人生を表現しているようで印象に残ります。

二人は愛し合う

さて本作1巻は、二人のセックスシーンが2回登場します。

 前作からすれば倍ですね!

 相変わらず、日常的な出来事として描かれるので、やたらに扇情的な演出は一切なく、二人にとって自然な出来事なのだなぁと感じる雰囲気なんですね。

 とは云え。

 年下攻めの無軌道さをしっかり描いていますから、腐女子諸姉には楽しめる内容なんじゃないでしょうか。男の視点で見るとなかなか面白いんですよね。

 年下の男の子が「すぐ済むから!」と云ってゴムを装着せずに挿入し、年上受けに「もーーーー!」と云われるとは。

 ノンケからするとああいう展開で男が「もーーーー!」なんて云う事があり得ませんからねw

 こう云う感じって、イチャついた二人にとっては超楽しいし興奮するんでしょうなーとしみじみしてしまいました。

バリエーション豊富かも

2回目のセックスシーンでは、お互いのジョイスティック(←割と下品な表現)を握り合いながら駿くんは辛抱たまらん!となってしまい、駿くんが実央くんを口でイかせてあげる展開です。

 当たり前ですが、男同士だと攻め受け逆転のフェラも可能なんですね。

 これはこれで、愛情ある行為だなーと感じます。受けが、いわゆる心太(ところてん)イキしなくても良いわけですし、なんだかバリエーション豊富で羨ましいですね(←違っ)。

物語は転がる

物語は、ゆっくり進んでいます。このペースは前作から変わらない印象ですが、出来事は多くなりました。合わせて登場人物も増えましたね。駿くんの弟が登場してショタ対応まで始めた事は特筆すべき事象でしょうか。

 カンナ先生やりますね。

 病気だと思っていた父親は実は元気だったし、なんだかんだで実家近くに二人で住む事になったし、なんだかシチュエーションとしては穏やかな状態になってしまい、ここからどうすんの!?と不安にもなったのですが、なかなか気を惹く終わり方で2巻に続きます。

 さて、ここからがカンナ先生の本当の闘いが始まるな、と思ったのは僕だけでしょうか。と云うのも、大体もうエピソードを出し切った感があるんですよね。

 こんなに穏やかな状況で話続くの!?

 新キャラの入り込む余地はなさそうですし、弟くんとの絡みはあるにせよまあ落ち着くトコに落ち着くだけでしょうし。桜子との事もペンディングされているとは云え、今更駿くんになびくとも思えませんし、新たな女性キャラが出てきても発展のきっかけがありませんし。

 しばらくは弟「ふみ」くん関連でわいわいとしそうですかね~。

最後に

なんだかBLは単なるインタフェイスであって、カンナ先生は暖かな家族ものを描きたいと思ってらっしゃるのあかな~と感じた1冊でした。仮にそうだったとしても、僕は全然楽しめるので一向に構わないんですけどね。

 いずれにせよ、2巻がどう転がってくれるのか、楽しみに待ちたいと思います。■■

海辺のエトランゼ (onBLUE comics)

海辺のエトランゼ (onBLUE comics)

 
星を手繰る【イラスト入り】 (ダリア文庫e)

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written by つよ