Boys Love Institute

ノンケ男がBL世界や雑談をだらだら綴るブログ

「海辺のエトランゼ」を読んだ感想は『紀伊カンナ先生の作品がマイルドBLとして非BLファンの友人にもオススメしやすい』だった

わたくし、先月転職をしまして新しい職場で働いています。会社を畳む事になったので、就活と云うやつをしたんですね。そこそこイイ歳ですけど就活。で正社員採用決定したわけです。

 その新しい職場では、腐女子パイセン(先輩)が2名程いらっしゃいまして、これまで知らなかったBL界隈の情報などを教えていただいています。まだ日が浅いから確認出来ていないだけで、もしかしたら更なるBLパイセン(先輩)が潜伏している可能性もありますね。毎日が楽しいです。あ仕事も楽しいです(迫真)。

 そんな幸せなBLライフの予感に包まれていた僕に、Aパイセン(先輩)がとある作品をオススメしてくださいました。それが今回紹介する作品です。これがまた、げっつい良かったんですよね。因みにパイセン(先輩)は一回り以上年下です。

基本情報

海辺のエトランゼ (onBLUE comics)

海辺のエトランゼ (onBLUE comics)

 

年下フリーターとゲイ小説家のじれったいほど切なく、心が洗われるようなボーイズラブ。

小説家の卵でゲイの橋本駿と、物憂げに過ごす高校生・知花実央。3年前、2人は沖縄の離島の海辺で出会い、日に日に距離を縮めるが、未央が島を離れることに。そして3年後、島に戻ってきた未央は「3年考えた。男でも駿が好き」と迫る。しかし駿はいざ未央と恋人同士に、となると一歩を踏み出せなくて…。
大注目の作家・紀伊カンナ、待望のデビューコミックス!

感想

いやー。BL大陸に足を踏み入れてから、新しいオリジナリティと才能の発見が連続しっぱなしで、エンドルフィンがだだ漏れ状態の僕ですけども、今回もまた素晴らしい作品に出逢ってしまって、嬉しい限りです。

 本作がデビュー作です。新人らしからぬ技が炸裂していまして、とにかく絵も演出も物語運びも超達者です。Aパイセン(先輩)の話によると、元々がアニメータさんだったんですねーカンナ先生。同人誌界隈でもデビュー前からそれなりに人気のあった方のようです。

 ちょっと調べてみたらヤフオクの同人誌カテゴリに、8,000円とか10,000円とかで出品されていました。ううう見てみたいのう……。

弩級安定の作画能力と世界観描写技術に垂涎!

 アニメータさんですからまあ背景は描き込まれているし、キャラクタの動きも生き生きしています。キャラクタの動き方が自然で、細やかな演出が隅っ々まで行き届いている事が判ります。

 そもそもBLマンガの表紙に、土間の引き絵を見開きで持ってくるあたり、世界観をしっかり描きたいと云う作家性がジュンジュンに滲み出ているなーと感じます。

 この背景がまた細かくて、裏表紙には涅槃経の額がしっかり描かれていたり、小物がいちいち丁寧にしかし煩くない表現で描かれていたりと、ただただ表紙絵を眺めているだけでも楽しめてしまいました。

 ちょっと褒め過ぎか?

 いえいえ、本当に好きな絵と云うのは、眺めているだけで嬉しいし楽しいものです。特に、背景などを含めた「世界観」の構築に心血を注ぐタイプの作家に僕は弱いのです。

 カンナ先生の描くコマには、いたるところに植物が描かれています。物語やエピソードに直接関係のない部分でも、しっかりと物語の舞台となっている島の風景を描いているんですね。「世界をしっかり描きたい」と感じるか否かは、完全に作家が持つ趣向の範疇ですから、カンナ先生は単に作画技術が高いだけの作家ではないと云う事です。ちょっと注意して読んでみると、島の四季が移り変わっていく様がさりげなく描かれている事に気が付くと思います。

 島を抜けていく爽やかな風が木々を揺らす音、照りつける日差しが作る木漏れ日の揺らぎ、厳しい冷たさの黒い海。様々な自然の表情を丁寧に表現されています。

キャラクタの既視感について

元々がアニメータさんである事が手伝ってか、どこかで見た事あるような……、と感じるキャラクタ造形です。

 まハッキリ云えば貞本さんですね。

 と思ってたらサマーウォーズの同人誌を作ったりもされていたようです。「好き」ってことを隠していませんね。天晴れ。

 通常で云えば、物真似とか剽窃とか云われちゃいそうですが、カンナ先生の場合はしっかり自分の線に昇華されているので、恐らくネガティヴな評価は少ないんじゃないでしょうか。

 結果的には、見慣れた雰囲気の綺麗な絵が自在に動いているので気持ちいい、と云う状況になっていて、作品のインタフェイスとして充分に機能している印象です。

 正直なところ、男も全員女の子に見えるってのはあるんですが、そこは心の眼で読み進めましたw

物語の構成

端的に云うと、シンプルです。Boy meets Boyの教科書みたいな物語です。フックとしては、年上受け駿くんに女性との結婚式当日に逃げ出した過去があると云う点と、年下攻め実央くんの両親が既に死んでいると云う点で、駿くんは家族と絶縁しとある離島で暮らしているという設定です。

 家族を失って毎日海を眺めている実央くん。

 そんな彼の事が気になり声をかけてしまう駿くん。

 ド定番な入り方ですけど、云いかえると無理がない導入とも云えます。色々の出来事が起こりはしつつ飛び道具的展開はなく穏やかに事件は起こり解決してゆきます。

成長物語としての側面

僕はこう捉えたんですよね。過去に傷がある二人が出逢い、お互いを想い合う事で眼を逸らしてきた過去を乗り越える的な。

 ただ、そう云う見方をしていたせいか、実央くんの心境の移り変わりについての描写がちょっと足りていない印象でした。どうして3年考えた結果、駿くんの事を好きになろうと思えたのか。

 どういう成長がソコにあったのか。

 もちろん物語の中で断片的な想いが語られる場面は用意されていますしそれは過不足無い情報量ではあるんですが。まあこれは好みの問題でしょうかね。僕的には、もう少し情緒的な描写が欲しくなった、って感じなんですよねー。

 それに対して駿くんには物語上、具体的な成長と解決が求められます。この解決と云うか、人生の課題に対するジャンプアップが物語の全体を貫く軸となっていて、「実央くんの両親が亡くなったトコロ」から物語が始まった「ネタフリ」が効いてくる構造になっています。

 この辺りも、最初から1冊で完結させるつもりでしっかりネームを切った事が伺え、なんとも無駄のない構成にまとまっていました。

 きっちりした方なんでしょうねー。カンナ先生は。この点でも「上手いなー」と唸らされました。

エロ描写

アルにはアリます。セックスシーンが一度だけですが。この内容も、年上のゲイが受けとなっていますから、まあ定石っちゃあ定石ですかね。

 ただ、描写は実に控え目です。

 手コキをしてあげるシーンなんかがありますけども、とてもマイルドな表現に留めていますから、なんとも可愛いシーンに仕上がっていました。

 こう云う作品は、BLを読まない友人にも勧めやすいんですよねー。漫画力高い系。ホモの惑星が舞台の作品なんかをイキナリ勧めようものなら、確実に拒絶反応が起こりますのでね。

最後に

マンガとしての完成度が高すぎて、ついつい技術的な面や構成の話に終始してしまいました。しかしグっとクるシーンもたくさんあるんです。

 しかしこの作品でその事を語るのではなく、続編にあたる「春風のエトランゼ」にて書こうかと思います。ええ、既に購入済ですので。えへへ。では引き続きよろしくお願いいたします。(←仕事モード)■■

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onBLUE 14 (Feelコミックス オンブルー)

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  • 作者: 紀伊カンナ,阿仁谷ユイジ,のばらあいこ,松本ミーコハウス,彩景でりこ,たなと,新井煮干し子,恋煩シビト,カシオ,河馬乃さかだち,黒娜さかき,京山あつき,四宮しの,阿弥陀しずく,フルカワタスク,市川春子,kona,柊ゆたか,フジサワユイ,町麻衣
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written by つよ