どえええい!!!中村明日美子作品が続くんちゃうんかああいいい!!!と思ってくださった方、ありがとうございます。弱小底辺ブロガーの僕にはそんなお声がないので、ただ一人黙々と書くワケですが(ここ数カ月あんまり書いていませんでしたケド)、何度も中断されてはまた最初から読み、また中断されて……を繰り返していた作品の読了に成功したので、書くなら今しかないと思いまして本作の感想エントリ投下に至りました。
人気作家様の、おげれつたなかさんの作品です。このペンネームの振り抜きっぷりで、ハートを鷲掴みにされたのは云うまでもありません。では、ネタバレ前提で書こうと思いますよ。
基本情報
真山(まやま)は中学の同級生・弓(ゆみ)と再会した。
彼氏持ちと知っても、弓に惹かれる真山だが、彼が恋人に殴られているのを知り……。
二ヶ月連続刊行第一弾!
感想
本の装丁やタイトル、表紙絵の美しさと、ペンネームの落差がここまでハイコントラストな作品は初めてかもしれません。たなか先生、とおよびすればいいんでしょうか。おげれつ先生、でもいいかもしれませんねそうですねそうしよう。
おげれつ先生の作品はこれが一冊目です。あとがきを読むと、本作が商業作品2作品目との事ですから、遭遇の順序としてはまあ良かった方でしょう。しかし、想像していた作風とはまるで違ったので、ものげっつい驚きました。
流血モノのBL
正しいジャンルではないでしょうね、流血モノ。暴力モノと云うのかもしれませんが。とにかく、物語の一番最初からいきなり恋人に殴られて鼻血を出す、主役の「弓」くんが描かれます。殴られて鼻血まで出してるのに、ヘラヘラして「もーいってーなー、はは」くらいのテンションでリアクションすると、更に罵倒されます。それでも二人は恋人同士で、一方的で攻撃的なセックスに興じたりするんです。
もう最初っからむっさ苦しい!
いやー。僕はこの作品で改めて自分の苦手な部分を再認識しました。つまり、暴力を受ける側が、振るう側を愛している、と云うケースです。これが、こんなに苦しい設定だったとは、正直理解出来ていませんでした。
たぶん、ですが、苦手なシチュエーションだったので知らず知らずの内に避けて通って来たんでしょう。それが、この作品は表紙など外観から窺い知れる情報とは裏腹にいきなり鼻血スタートです。
同性愛者の恋人同士に限らず、二人の関係性に暴力が関連するケースは然程珍しい設定ではないはずなのに、もうページをめくるのがキツいキツい。ちょっと鼓動が速まっていたかもしれません。
ネガティヴなシチュエーションの先にあるからこそ意味をもつ感動
話は飛びますが、僕は映画がむっさ好きです。中でも恐怖モノ、ホラーと呼ばれるような類のものが特に好きです。
これらの作品は、良く人が死ぬ様や、死にそうなくらい苦しい様が描かれます。グロとかゴアとか云うやつですね。このテのものを、多く好んで鑑賞してきました。
正確な表現が難しいのですが、僕は人がバラバラの肉片になったり苦痛に顔を歪ませて泣き叫ぶのを見て快感を得ているワケではありません。あまりに荒唐無稽な殺害方法のアイデアに笑ってしまう事はありますが、気持ち良いとは感じてないんですね。
しかし、極限の苦しさや痛みや悲しさを描いた先にしか表現し得ないような、キャラクタの感情だとか観る側が感じる感覚と云ったものがあると思っていて、人がソレを想像し更に創作物として作り上げてしまう事の奇妙さに、強く惹かれるんです。
面倒くさい日本語になってますねw。
ただの馬鹿映画としてスプラッタホラーを楽しむ事も出来ますし、極限状態の人間がどうなってしまうのかを描き出すような心理的恐怖を楽しむ事も出来ます。
これらの作品を楽しむ上で気になるのは、中途半端なシチュエーションやネガティヴ要素は、作品のテーマを台無しにしていまう可能性があると云う点だと思うんですね。永い悲しみの先にある何かを描こうとするのであれば、その輪郭をより明確に描写する為に必要な要素は、手前に用意された乗り越えなくてはならないネガティヴ要素だと感じます。より克明により丁寧に描く必要があるんじゃないかなと思うワケです。
話を元に戻します。
つまり、おげれつ先生(←w)が描こうとする物語のテーマ性に、この暴力性や支配感、無情感は、必須要素なんだろうなと想像したんですね。ですので、むっさ苦しい想いをしながらも、結果的に何度も読む事になろうと最後まで読むつもりでいました。
で結果的に読んで良かったです。
ジャイアン効果からのラブい展開
物語は至ってシンプルです。高校の同級生だった「弓」くんと「かんちゃん」は卒業後も付き合っていますが、かんちゃんは昔のように仲の良いダチではなく、弓くんを支配的に傷付けるような存在になってしまっています。
自分が傷付いていないかのように扱われる事で弓くん自身は、自分が本当は傷付いていてもその事に目を向けずに居る事が出来るので、かんちゃんに依存する形で関係を続けていました。
そこに弓くんの中学時代の同級生で、当時弓くんの事を好きだった真山が現れ、二人は揺れ動く、みてーな!
もうお分かりだと思いますが、弓くんはなんやかんやあって(←w)かんちゃんと別れ、真山と遂には結ばれるんです。そのシーンが160ページ中140ページあたり。
そこから怒涛のべたべたラッブラブ展開があなたを待っています!
そう云う事かーと思いました。元々のスタト地点を低めに設定する事で、ちょっと浮き上がるだけでも落差を感じてよりエクストリームな感覚を得る事、これを専門用語でジャイアン効果*1と云います。
このジャイアン効果を巧みに利用した作品でした。
いやー、しかしほと辛かったわー。もう哀しくなって来てしまうんです。腕や首がばびょーんと吹っ飛んでいく爽快バカホラーの方がどれほど人間的だと思えたか。
この苦しさを乗り越えて読み進めたご褒美として、怒涛のべたべたラッブラブ展開が与えられた時には、もうキスシーンだけでぎゅんぎゅんキます。あ、ミラクルフルーツ効果って云ってもいいでですね、今度からそうします。
ともかく、140ページ以降は、遂に本懐を遂げた弓くんと真山が、ただただイチャついて恥ずかしいセックスやじゃれ合いをこれでもか!と見せつけるだけの展開です。コレはもちろんディスっているのではなく、狙いが狙いとして正しく機能する勝利宣言だと云いたいわけです。
この恥ずかしさに到達する為にはこの苦しさが必要だったのだ。
僕はそう感じました。ただ甘い二人の、っどーでもいい痴話喧嘩を長々と見せられるよりも遥かにスイートな(←w)仕上がりを体感出来て、大変満足でございます。体力が必要な事は間違いありませんけどね!でもおげれつ先生の作品は、もっと読みたくなりました。良かった読んで。
絵の話
おげれつ先生、絵が大変達者です。少女漫画の系譜に属するような画風ではなく、どちらかと云うとレディスコミックの肉感的な作風に近いでしょうか。あとはエロ劇画系かな。
特筆すべきは、男の顎や喉の隆起を、解剖学的にもより正しい表現をなさっておられました。これは、おげれつ先生が描こうとする「世界観が持つリアリティ」を決定する重要な要素だと感じます。
そして最重要なのは、デレた時の落差がより際立つと云う結果になっている事でしょう。可愛さの表現としては、ズルいレベルで際立ちます。まさにおげれつ。よだれを垂らしながら快楽に興じる弓くんは、ものげっついエロいワケです。
最後に
流血系に恐れをなして逃げ出さずに良かったです。これからもおげれつ先生はおいかけようと思いましたので、すでに2冊目は購入済です。まだ扉も開いていない状態ですが、またいずれ感想を投下したいと思います。■■
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*1:ジャイアン効果:1980年に初めてその存在が認められた現象。同年3月に公開された劇場アニメ作品「ドラえもん のび太の恐竜」において、通常どうしようもなく乱暴者で敵対する存在として描かれた登場人物「ジャイアン」が、劇場作品においてのみ、仲間想いのたくましいヒーローのように描かれる事を発端とする説が有力だが、真相はばけらったなアレであるとかないとか。