「桜花咎の契」を読んだ感想は『これは泣ける主従だねぇ』だった
表紙買いを、わたくしまたやってしまいました。絵が良さそうと云うのも気になった点ですが、時代モノであろう事を匂わせるタイトルと絵柄に視線がロックオンしたからです。
そう云えば、時代モノのBLは読んで居なかったな。さて、その中身はどうだったのか、感想を綴ってみたいと思います。例によってネタバレを気にせず書きますので、ご注意下さいませ。
基本情報
【孤高の天才・源義経と、運命を共にした弁慶。日本歴史上、最も有名な主従愛がBLで登場! 】
五条大橋の上で出会ったふたりは、互いに惹かれあい、主従の契りを交わす。
深い絆で結ばれながら、その身を挺してまで自分を護ろうとする弁慶の強い想いに、義経が選んだ未来とは…。
日本史上最も著名な主従愛をもとに圧倒的スケールで華やかに紡がれる、歴史“恋"絵巻。
感想
いやー、コレは良いです!まずは漫画作品としての偏差値と云うか基礎体力値が、げっつい高いんです、吹屋先生。
キャラクタの造形は表紙の時点でかなり良さそうだと思っていましたが、表紙の絵と云うのは奇跡の1枚である可能性もあり得ますから、完全な信頼足り得るかと云うと、さにあらず。
ジャケ買い失敗例の殆どは、ジャケから期待された内容と実際の本篇内容との間に大きな乖離があったケースでしょう。
騙された!と叫んだ記憶は億千万の胸騒ぎです、まったく。
しかし吹屋先生は違いました。
キャラクタは勿論の事、背景やコマ割、演出、どれをとっても期待以上に高レベルでした!
疑ってサーセン!
あと、僕的に最も大きな収穫だったは、これ迄遭遇してこなかったシチュエーションを読む事が出来たっつー件です。
つまり、主従愛です。
主従のバリエーション
この作品は、源義経(表紙で噛まれている人)と武蔵坊弁慶(表紙で噛んでいる人)の主従愛が基本の話ではあるものの、その中には幾つもの主従関係を描いています。
これは明らかに吹屋先生の主従萌え性癖を「ッドリャァ!!」とぶち撒けた作品と云う事でしょう。主従関係としては、弁慶✖️義経、義経✖️静御前、義経✖️佐藤継信、義経✖️佐藤忠信、梶原景時✖️頼朝、俊寛✖️有王、です。
主従多くね?
戦乱の世を舞台としているので、遠慮会釈なしにコレデモカ!コレデモカ!と主従を放り込んで来ます。実際のところ日本史に疎い僕としては、まぁ時代が時代だし男色の文化なんてのは珍しくもなかったんだろうかなぁ、と思ってましたから、別段違和感を感じる事なく読めたわけてす。
設定アレンジ、つまり……
キャラクタの味付けには吹屋先生独自のアレンジが加えられており楽しいです。
義経は家臣には俺様モードの強気受け、弁慶は義経ゾッコンのヘタレ忠犬攻め、頼朝は暗黒腹黒能天気の受け、佐藤忠信は兄想いのワンコ家臣、静御前に至っては女装のおネェにしちゃったり、もう自由自在です。
頼朝の性格の悪さが酷くて、キャラとして立ちまくってるのも良かったなぁと思います。そのくせ弟義経を溺愛してたり、平気で見殺しにしたり、Sキャラとして完成度高いです。
きっと日本史が大好きなんだと思うんです、吹屋先生。もう大好きで大好きで史実に登場する生かした男達のBL妄想が爆裂していると思うんですよね。
つまりこの作品は歴史2次創作っつー事ですね。
版権元が日本史なので、誰にも咎められないと云う点では、いいネタですよね。確認していませんが、きっと同人誌界隈では鉄板ネタなんじゃないでしょうか、歴史モノ。
弁慶✖️義経が泣けた
全体の構成は、平家物語や源平合戦の有名なエピソードを配置し、そのレールに吹屋先生のオリジナル設定などを盛る形で進みます。
つまり読者は、最初から義経も弁慶も死ぬ事を知りながら読み進めるわけですね。
その上で弁慶が義経を溺愛し、自らの命を賭して守ろうとする姿が涙を誘います。幼い頃から源の宿命を背負い、平家討伐を夢見て都を後にする義経の不憫さに心打たれた弁慶は、涙しながら義経を抱きしめます。
そしてその時から、弁慶は義経の為だけに生きると誓うのです。運のいい時もわるい時も、ずっと離れず義経を守ろうとする弁慶。最後の最期、家来は弁慶一人になってしまった時の一言が泣かせます。
絵のはなし
とにかく達者です!かなりキャリアの長い作家さんなんですかね。他の作品も読んでみたくなりました。絵の省略も気持ちいいですね。ザザっと粗い描線で光と影だけを描いている背景など、とにかく一コマ一コマの密度が濃く、見ごたえがあります。
一枚モノのイラストなんかも描かれるんでしょうかね。画集が発表されているなら観たいものです。
あと歴史モノがお好きのようで、和装の描き込みも素晴らしいです。慣れた線でどんどん描いてる感じ。安定感あるなー。
セックス描写もあるにはあるのですが、なんだか恋愛する二人の一場面を観ているような感覚なので、淫猥さはあまり感じませんでした。微笑ましいというか暖かいというか、そんな感じです。
最後に
いいですね、主従モノ。かなり気にりましたと。つーか、刀剣乱舞の楽しみ方って、この主従萌えが重要だったのかも、と今更気が付きました。遅い!■■
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