FSS第4回のエントリです。そして前後篇に渡るロングエントリです。今回はFSSを未読でこれから読む可能性がある方を対象としているのではなく、既にある程度本篇をご存知の方にこそ読んで頂きたいと思っています。
とは云え、出来ればFSSを未読の方にも本篇を13巻まで読んで頂きたいと思っていますので、1話のネタバレを知った後で、続きの巻を読みたくなってもらえたら成功ですね。
で何を書こうとしているのかと云いますと、1回目の映画化までの話を書こうと思います。
「え?1回目?FSSって2回も映画化されてたっけ?」
正しいツッコミを心得ていますね。
2回目の映画化をFSSと呼ぶのか否かについては、また改めて書きますのでとりあえずスルーでお願いします。
ともかく、映画化された作品を解説する事はイコール第1巻の解説となりますす。
ただ単にあらすじをダラダラと書くのも面白くない(僕がw)ので、1巻を読んだ人にも楽しんでもらう為に、これ知ってる?と云う内容を織り交ぜてみたいと思います。
では、いざ。
連載開始時のどよめき
1986年に連載開始したファイブスター物語は、重厚かつ緻密な各種設定と、多彩なキャラクタが展開する物語が当時のアニメファン、SFファンに受け入れられ、じわりじわりと人気が拡大して行きます。
そのファンの中にはエルガイムから永野先生の存在を知りハマった人も多くいました。
そしてFSSの連載開始は彼等(僕も含む)にとって、とても興味深い疑問の回答足り得ると思われたのです。
「あの永野先生が遂に、真のエルガイムを語る時が来たのか!?ゴクリ……」
真のエルガイムってなんじゃい。
そう思われた方は連載開始以降に永野先生を補足したファンの皆様ですね。
どうぞどうぞ良くいらっしゃいました、そう云う方々にお伝えしたい事があって今回のエントリを書くと決めたのですからどうぞ真ん中に。
この事を説明する為にテクストを用意しました。
重戦機エルガイム[2]ザ・テレビジョンアニメシリーズ2
角川書店
さて今回も古臭い文献を引っ張り出して来ました。
これは、TVアニメシリーズ「重戦機エルガイム」*1の放映終了後、翌年に出版されたムックです。
古参のファンの方には、ああまたコレの話か……と云われてしまいそうですが、気にせずいきますよ!
カマン!ニューカマー!
このムックの出版によって世に初めて「ファイブ・スター・ストーリーズ」という名前が放たれました。
ページをめくるその前に、裏表紙を。
これは明らかにファティマですねw(久しぶりに見たら本当にそのまんまでした)。
と云うか、側頭部にある赤い十字マークがもう、ね。
このマーク覚えておいてくださいね。
更にカバーを外してみると、本体の表紙はコレです。
2番目の主役メカであるエルガイムMk-2の外部装甲を外した状態の頭部ですが、ハッキリ書いてますね。
ファティマ「ティータ」と。
そして十字架にかけられたような人影が額の位置に描かれています。
アニメに登場したエルガイムMk-2には、ファティマを搭載する設定はありませんでした。ただ、永野先生がそんな設定を進言したものの富野監督にボツを喰らったと云う事実は実際にあったそうです。
ティータと云う名前、これもちょっと覚えておいてくださいね。
FSSの産声
ページをめくると、いきなりですが年表が出迎えてくれます。
年表?
FSSではおなじみの年表、エルガイムのムックに掲載された年表には「THE FIVE STAR STORIES」と書かれているじゃありませんか。さてその内容で気になる記述を抜粋してみます。
2228
トライデトアルのある学者が、ヘビーメタル専用のスーパーコンピュータを開発した。"ファティマ計画"のことである。2552
最強のコンピュータ・ファティマ”ラキシス”、”アトロポス”、”クローソー”が完成する。このころ、すでに全星域にわたりファティマとヘビーメタルの関係は成り立っている。ペンタゴナ星域におけるヘビーメタル全台数は225台、内ファティマは125台であった。2627
ファティマ・コンピュータをもつヘビーメタルは最強の兵器となったために、ヘビーメタルを所有できる階層(王族、貴族、豪商など)は、争ってファティマを求める。しかしファティマ自身、マスターを選べるために、なかなかヘビーメタルとファティマのドッキングはうまくいかなかった。やっかいな兵器ではある。2732
ポセイダル、"ラキシス"を入手。お互いにひと目ボレであったようだ。愛情も関係しているのかもしれない(のち、ファティマ・コンピュータは500大で生産停止となる)、2737
ポセイダル、"アトロポス"をも入手。のにち、"ラキシス"はディスティニー・テンプルに、"アトロポス"はプディン・オージェに搭載された。2935
ポセイダル、首都上空1万㍍に、フロートテンプルの建造を開始。3000
ポセイダル、フロッサーシステムを搭載したヘビーメタル、プディン・オージェにシステムを投入、"アトロポス"をその専用ファティマとする。"ラキシス"は宮殿内に保管されていた。3158
D・テンプル完成。"ラキシス"を搭載。3159
オージェ、B・テンプル、D・テンプルをもち、トライデトアル進攻開始。
おっと危ない危ない、ずーっとこれを書きつづけるところでした。
ポセイダルというキャラクタは「重戦機エルガイム」内におけるラスボス、敵です。これが後のFSSにおけるアマテラスのモデルとなっている事が窺い知れますね。
あと、ヘビーメタルは、モーターヘッドに置き換えられます。この時点でファティマは、人型ではあるものの完全にコンピュータという存在として考えられていたんですね。
これらの年表内の出来事は、TVシリーズとはまっったく関係ありませんw。年表の最後にはこう記されています。
「ファイブスター物語」はすべて永野護氏創作によるもので、TVシリーズとはなんら関係ない事をお断りします。
あくまで、永野先生個人の創作であり、エルガイムとは別物、とわざわざ断っているんです。確かにエルガイムでのポセイダルは、悲惨な最期を遂げました。ただ、この年表を観たエルガイムファンは、その瞬間から思っていました。
「ファイブスター物語」とやらを観てみたいっっ……!
ファイブスター物語は既に語られていた?
年表のページをめくると、見開きイラストページが10枚20ページにわたって掲載されています。これらは、年表中の主だった出来事のシーンを永野先生が描き下ろした作品のようです。
そしてそのイラストを説明する文章が英文で添えられています。その内容を和訳でご紹介しましょう。
●TRAYDETUAL-3159-
耐Gシステムである"フロッサー"を両足の中に2基搭載した、スーパーヘビーメタル"B・テンプルの"トライデトアル、バラクーン地方における戦闘は、わずか18時間で終了した。
このB・テンプルはNo.8である。初代ヘッドライナーはテンプルナイツNo.4のF・U・ログナー侯爵。No.8、B・テンプルは、この後、8度の出撃を行っており、最終聖戦争を除き、すべての戦闘に参加している。
●GUSSTUGUL-3198-
ガストガル上空、1万㍍の高空に浮くオルドナ・ポセイダルの空中宮殿、フロートテンンプル。
この宮殿の中で、テンプルシリーズが生まれた。7つの塔はそれぞれ、アシュラの宮殿、血の宮殿、恐怖の宮殿、そして、ポセイダルの本館である"ラキシス"タワーとなっている。
手前には全長1.3㌔を誇るポセイダルの戦艦、スターシップ・トュルーパー"エイプ"。その向こうの入り江には、クルーザー"ホエール"が停泊している。
●GUSSTUGUL-3202-
インペリアル・テンプルの中にて、ラキシス、アトロポス、ポセイダルの3人。
スーパーコンピュータ・アンドロイド"ファティマ"の中でも最強といわれる、クローソー、ラキシス、アトロポスの3姉妹の内、2人まで手に入れたポセイダルは、自分のもつ、プディン・オージェにアトロポスを、そして新たに作ったペンタゴナ界最強のヘビーメタルD・テンプルに最愛の"ラキシス"を搭載し、名実ともにポセイダルは最強のヘッドライナーになったのである。ポセイダルはその頭脳、容姿と共に戦闘力においても天才であり、12人のテンプルナイツが束になってもかなわないといわれている。
さて、ラキシスは、この後、悲劇を迎え、宇宙の彼方に飛んでいってしまうが、彼女亡きあとアトロポスがこの帝王のそばを一時も離れず最後まで付き添っていたという。彼女の魅力は、人間だけでなく、ロボットにまで通用したようであり、うらやましい限りだ。
皮肉なことに、クローソーは、2代目ペンタゴナキングのカモンⅥ世のもつアーメスに搭載されていた。
●KALAMITY-3205-
ペンタゴナ5星の内、最も古い歴史をもつ星"カラミティ"のバストーニュにおいて、蒸気洗浄されたガスト・テンプルが出撃していくところである。
手前の人物は、このG・テンプルのヘッドライナーであるジョーン・バインシェル。
このように各HMは重力や地質の異なる星において調整を受けてから出陣していくのだ。
●COREMU-3205-
同年の後半、カラミティを爆発させたポセイダル軍は、完成したプラネットボンバーを使用し、衛星軌道上よりコアムの大地に向けてミサイルを雨アラレと降らし、都市の中心をメチャメチャにしてからヘビーメタルで蹂躙をかけたのである。この戦法は、ポセイダルが一番良く使う手であり、絶対制宙権を持たないと不可能である。このコアムの都市ディパーチャーはたった15分で落ちてしまった。
●IN SPACE-3577-
惑星カラミティの破片がものすごいスピードで宇宙を突っきっていく。この破片の中には、ディスティニー・テンプルとラキシスが眠っている。カラミティのゲル状の沼に沈んだD・テンプルは、ラキシスの判断でポセイダルを脱出させ、自分たちはその沼に沈んでいったのである。
カラミティ星爆発直前、ポセイダルはその沼に瞬間硬化剤をプラネットボンバーにより撃ち込んだため、このように岩の中に半ば化石と化したまま宇宙をただよっているのである。
●MIZUN-3959-
ミズンの海に沈むE・テンプル。たぶん、集中砲火を浴びたのであろう。1本のバスターランチャーはみごとに吹っ飛び、火災を起こしたようである。第二次聖戦争のころになると、ポセイダルの戦法もミズンの王(カモンⅤ世)などに知れ渡り、このようになったらしい。
●COREMU-3983-
コアム、マルーン地方の渓谷を飛行するマークⅡ・グレイオン。
ボンバーユニットをつけ、12本のP・ランチャーにバスターランチャーというものすごい重装備であり、ヘビーメタルへの変形は不可能である。
このグレイオンの出現により、ヘビーメタルはその本来の役目を終了しようとしている。この15年後、ヘビーメタルは、ペンタゴナに1台も存在しなくなってしまった。
ヘッドライナーは、ガウ・ハ・レッシィ・クレーテンシュバイツ。
ヘビーメタル形態時の頭部はなとB・テンプル、No.3の基部が入っていた。
カルスト地形の多いコアムは、反乱軍の基地には打ってつけであった。
●GUSSTUGUL-3985-
ポセイダル宮殿の最後。反乱軍の"ヘビーメタル・インターセプター"であるマークⅢ・ワンダースカッツ(ヘッドライナーはネイ・モー・ハン元ポセイダル軍の将校)のバスター砲により、一発で空中分解してしまったのである。すでにF・テンプルはもぬけのからであり、どうということもなかったのであるが……。
このマークⅢはすでにヘビーメタルというものではなく、可変宇宙戦闘機といえるものであり、ペンタゴナでは、これ以降の主兵器はこのタイプになっている。ヘビーメタルは終戦時7台しか存在せず、これらもそれぞれ密封されて博物館入りとなった。
ヘビーメタルの時代はここに終了した。
●DESTINY LACHISIS-6599-
このイラストにはテキストがありませんが、先の年表によるとこう記されています。
6599
ラキシス目覚める
そして、物語に登場するD・テンプルの見た目はナイト・オブ・ゴールドそのものである事がこのイラストから判りますね。この最後のイラストも覚えておいてくださいw。
実はこれらの内容はとても似た形で「ファイブスター物語」の年表に登場します。名称などは流石に変更されていますが、概ね対応していますね。
FSS連載開始が1986年4月号のニュータイプからなので、その1年前にここまで物語の骨子は出来上がっていた事になります。
と云う事は原稿を執筆、作画する時間を差し引いてどんなに遅くとも1985年初頭にはもう永野先生の頭の中でまとまっていたのかもしれません。
今現在は2015年の夏。
永野先生はもう30年もこの物語に付き合っている、と云う事になりますね。ま、読者との差は2年くらいですが、我々はただ読み、待ち、読み、待ち待ち待ち待ち……待ち、読み、待ち、を繰り替えすだけです。
永野先生の創作意欲とイマジネーションの広大さに、改めて敬服しました。その上で一言残しておきます。
「そりゃ、30年も前に考えた事だから途中で変えたくもなるわな!」
用語集ももちろんあった
永野先生、とにかくお好きですよね設定創るのw。この本にもガッツリ用語集があり、26ページにわたって細かな情報が満載です。
また懐かしい文化の辞典ギャグ*2ももちろんあります。
当たり前ですが、当時全部読みました!
中にはラキシスに関する記述など興味をそそられるものばかり、でもなくて、チェッカーズやMTVなど、永野先生の趣味がここでも垣間見えます。
FSS第1話へ
ではそろそろFSS本編の話をしましょうか。
本題に入るのがいつも遅いのは僕の悪i(ry。ちなみに、FSSにおける第1話は連載1回分ではなくて単行本1巻全体を差します。
連載第一回は、未来*3のエピソードが語られます。
そしてこの連載第1回から、エルガイムファンだった僕は、ゾクゾクしっ放しでした。
後半へ続く■■
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